『ここが変だよ成年後見』

連載記事第5回

〈『後見制度支援信託』がブーム〉
〈実態は家裁による財産管理に〉

 
後見制度支援信託は、分別管理という信託機能を活用し後見人による被後見人の金銭使い込みを防ぐことを目指す「特約付き金銭信託」という金融商品で、2012年以降、信託銀行等が販売している。今のところ親族が成年後見人のケースにのみ適用され、その具体的手続きは次の5段階である

ステップ1

親族後見人がいるところに家裁が弁護士後見人を勝手に追加する

ステップ2

弁護士後見人が被後見人の現金を信託銀行に預ける=特約付き金銭信託を買う

ステップ3

信託銀行に預け終わった弁護士後見人は被後見人の財産から数十万円ととって後見人を辞める

ステップ4

信託銀行に預けたお金を使いたくなったら親族後見人は家裁に「下ろしたい」と上申する。

ステップ5

家裁が「良し」とすれば下ろせるし「ダメ」と言えば親族後見人といえども下ろせない。

要するに、家裁が後見人のお金の使い方を決める。実態は国家後見であり、ある意味恐ろしい代物といえる。後見制度支援信託について家裁は「横領を防ぐために必要な措置」と主張するが、後見人による横領を防ぐためにしては重装備であるし、弁護士等後見人を対象にしない理屈はない。信託を設定する費用、信託を管理する手数料、信託を崩して再設定する費用の全ては被後見人の自己負担となっている。そんなコストをかけて自分のお金を管理しておほしい被後見人がどれだけいるだろう。


家族後見人から大ブーイング

親族後見人の感情を逆なでするこのような説明が、ここ数年、全国の家裁で行われてきた。
息子さんが交通事故に遭い後見人になったお父さんがいる。事故から数年後、賠償金が息子の口座に振り込まれるや否や家裁から「増えた息子さんの財産をお父さんが盗るといけないので、弁護士を後見人に追加するか、お父さんに弁護士後見監督人をつけるか、賠償金のほとんどを信託銀行に預けるか、のいずれかを選んでください」と言われた。お父さんは「ふざけるな、事故で息子を半殺しにされ、後見でも半殺しにされたようなもんだ!」と怒りをあらわにする。
「これまで問題なく後見人の仕事をしてきたのに急になんだ!」、「弁護士や司法書士だって横領しているじゃないか!」と親族後見人の多くは異口同音に語る。
調査官・書記官レベルの説明ではらちがあかないと、憤慨したある親族後見人(慶応大学趣旨印、一部上場企業管理職)は、裁判官と面談をした。すると、裁判官は、「別に強制ではないんですが後見信託をすすめるよう上から言われておりまして・・・・」、「私もあと数か月で定年なのでなんとかお願いしたいんですけどね・・・」と話したという。これを聞いてその親族後見人は後見制度支援信託は強制ではないと認識し、「追加の後見人、後見監督人、後見信託、いずれも拒否します」と伝えた。するとその後、後見人としての財産管理権を家裁に剥奪され、財産管理後見人として若造の弁護士が後見人に家裁より追加された。実質的には強制である。

筆者は当該制度の起案者である。後見制度支援信託は親族後見人や市民後見人を応援するために考えられた仕組みで、初案の名称は「自立支援信託」だった。後見人が家裁から自立し、被後見人の生活をしっかり支援するために信託を活用するというものだった。最高裁家庭局に当該スキームを提案した後の2年弱、家裁・信託銀行・弁護士会で協議がなされた結果、現行の運用に成り下がってしまったことは残念で仕方ない。

最高裁によれば、2012年2月から2017年12月までに後見制度支援信託の適用を受けた後見人等の数は2万1504人で、それら信託財産額の累計は約6988億2800万円である。信託の設定費用を30万円とすると2万1504人×30万=64億5120万円の被後見人の財産が、弁護士・司法書士・税理士ら信託設定後見人の懐に入ったことになる。統計以降2年弱経ていることをかんがえると、家裁の都合と誘導により、1兆円の被後見人の預貯金が信託銀行の運用原資となり、100億円が弁護士等の懐に入ったことになる。信託銀行も味を占めたのか任意後見制度支援信託という任意後見制度の趣旨と逆行する商品が登場する始末である。
日本で最初に信託が流行ったのは第一次世界大戦から第二次世界大戦の間で、国民から巻き上げた現金で鉄砲を作るためだったという論文を読んだことがある。人生100年と急に謡われる昨今、またしても信託が家裁(国)により乱用されていると感じるのは私だけであろうか。


憲法違反の可能性提訴の動きも

障害を持つ子のお母さんは「コツコツ貯めてきたのがアダとなり後見信託の餌食になってしまった」、「信託設定費用の30万円といえば障害年金の4か月分です」と落胆していた。母の苦悩を肌感した息子が「みやぎだいいちしんようきんこさまへ ぼくはていきよきんをかいやくしません 6がつ28にち 〇〇〇〇」と書いて出したことで、信託を買うための原資作りに奔走する弁護士後見人を水際でブロックしたケースもある。制度から本人のお金を守る現場の攻防はまさに“戦い”といえる。

家裁の指示がないと下ろせないとする後見制度支援信託そのものが違憲とする裁判の準備をしている親族後見人もいる、成り行きに注目している。



一般社団法人後見の杜 代表 宮内康二

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