アメリカ後見改革の動向


社会福祉士  越川文雄氏


第12回 【Ⅳ 制度改革へ向けての問題提起、計画、試行錯誤、提言】

1 連邦議会「アカウンタビリテイ局」(Government Accountability Office:GAO)による問題提起

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連邦上院の高齢化特別委員会の要請に応え後見人だけでなく年金受取代理人(representative payee)等をも対象として調査を行い、2016年に「高齢者虐待:後見人による虐待の程度は不明だが、高齢者虐待防止の手段は存在する」(Elder Abuse: The Extent of Abuse by Guardians is Unknown, but Measure Exist to Help Protect Older Adults)という報告書を公表した。この報告書では、後見人等による虐待から本人を守るために取る対応は、州により異なっているが、一般的には次の4分野よりなるとして、各分野についての良き実践例等の紹介を通して問題提起をしている。

① スクリ-ニング:裁判所が後見人選任を真に必要とする人のみに限定すること及びその事案に適した後見人を選任することが重要である。そのための好ましい実践例、挑戦例を示す。

• 最小の制約となるオプション:有償、無償の介護支援者等による「より制約の少ない後見代替」の利用を促進する上で役立つような後見申立て書の様式変更を行った例あり。

•定期的な後見必要性見直し:裁判所が自らその必要性を定期的に再評価する。

• 犯罪履歴、信用チェック(Criminal history and credit checks):これは比較的に容易且つ費用の掛からぬ方法だが、他州でのデータが得られず、登録漏れ等の問題が指摘されている。

② 教育:略

③ モニタリング:

• 訪問調査によるチェック:本人の生活状況をモニターするために、裁判所が調査員による抜き打ち訪問調査を定期的に行うということを全ての州で行うべきであるとの意見があった。

• 後見人の支出調査:後見人は本人についての報告を毎年裁判所に行うと考えられているが、多くの州、郡ではこれらが所定のタイミングで提出されたか、内容は正確であるか否かを誰もチェックをしていないとの声がある。加えて監査を行っている場合でもそれは書面チェックのみで、本人の状況を確かめるための現地調査を行わないとの声がある。「全国後見協会」(the National Guardianship Association)の代表者からは、監督は多少行われているが、州によりその程度は大きく異なっていると説明された。後見モニターのための投資は、地域に任されており、財源が限定されている。この問題について繰り返し議論されることとしては、どの州も一層の監督強化を望んでいるが、そのための財源確保が出来ないということである。その対策の1つとしてABAと民間団体AARPがモニター要員確保のためにボランテアを募集し、トレーニングをするプログラムを実施した例がある。

④ 監督権限執行(Enforcement)

この執行としては、虐待をした後見人を処罰し、高齢者虐待を大目に見ることが無いというメッセージを伝え、今後の虐待発生を阻止し、時には犠牲者に対する賠償をさせるということである。そのための好ましい実践例、挑戦例を示す。

• 苦情処理システム(Complaint systems)

後見人の認証を行っている州では後見人に対する苦情は認証機関に申立てすることが出来る。そのために州のホットラインが設けられている。これにより認証機関としても他の認証のためのスクリーニングや認証継続教育に資する情報を得ることが出来、定期報告提出不履行の様な犯罪対象にならない義務違反への対処が可能となる。後見人に対する教育上の効果も期待される。しかし、本人自ら苦情申し立てを行うことが困難又は不可能な場合が多く、家族からの苦情申立てが多い。又、苦情申し立ては、虐待問題に関心を持つ人は誰でも法執行機関なり「成人保護サービス」(APS)に申立て可能であるが、実際には申立人なり申立先がはっきりしないとの声がある。裁判所にも苦情処理窓口を持つところがあるが、その手続きに通じた弁護人が得られないと難しいと云われる。

• 担当捜査機関(Dedicated investigative resources)

地域によっては後見人による虐待捜査、定期報告等のモニタリング、審査を独立して行う機関を設けており、良い成果を得ていると云われるが、多くの市の法執行機関が高齢者虐待専門部署を設けていない。

•適切な懲戒処分 (Appropriate disciplinary measures)

監督処分としては、後見人解任から刑事訴訟まで多くの処分がある。こうした処分を州が適切に行うことにより被害回復と虐待予防が可能となる。なお、州によっては裁判所が後見人に対し不正行為に対応したボンドを設定することを求め、被害回収を行うこととしている。

しかし、後見人が裁判所の指示を受けて過剰なサービスを行い、過大な謝金、経費を多く支出する例があるが、こうした形での虐待に対しては、法執行担当者としては対応することが困難である。一方、法執行担当者は、信認関係にある者については、関与できないし、関与すべきでないとの認識を一般的に持っており、 特に民事トラブルは民事裁判で処理されるとの認識を持っている。捜査や裁判に当たっての事実確認に要する費用も多額になる。虐待のペナルテイについては、判決は軽くなる。刑執行も免除される傾向にあリ、 検察官は金額が小さいケースについては殆ど検討対象にしないという声が出ている。



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