アメリカ後見改革の動向


社会福祉士  越川文雄氏


第3回 【Ⅱ アメリカ後見改革の経緯】

2. 改革の牽引車となった3会合

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(1)1988 年“Wingspread” conference at the Wingspread conference facility, Wisconsinの開催

上記の動きと併せて、「米国法曹協会」(American Bar Association;ABA)の「法と高齢化委員会」(Commission on Law and Aging)と「障害者法委員会」(Commission on Mental and Physical Disability Law) が学際的な専門家会議を開催し、弱者の権利をより良く守るための後見システムの改善に向けた基本的事項についての勧告を行った。

この主な特色としては、次のようなものが挙げられる

①後見申立てが行われた本人を手続き面において従前以上に保護する

② 無能力判定の機能的要素の重視

③限定後見の活用と制約最小限の後見代替の重視

④裁判所の後見人に対するモニタリングの強化

⑤ 公後見の拡充


ABAは後見モニタリングのベストプラクテスを取り纏めた(2006年にはアメリカ退職者協会(American association of Retired Persons: AARP)と共同で見直した)。AARP 傘下のLegal Counsel for the Elderly Inc.は訓練を積んだボランテアを活用する「全米後見モニタリング・プログラム」(the National Guardianship Monitoring Program)を実施した。

1991年「全国検認判事会」(National College of Probate Judges :NCPJ) が「全国州裁判所センター」(The National Center for State Courts:NCSC)と協力して2年間のプロジェクトを立ち上げ、「全国検認裁判所基準」(The National Probate Court Standards) を策定し、1993年に公開した。ここでは「限定後見」、「より制約の少ない後見代替」の活用等が規定された。2013 年には改定。


(2)2001年“Wingspan” conference in St. Petersburg, Floridaの開催

ここでは前回の勧告の見直し等が行われるに止まったが、新たに州相互間問題(interstate jurisdictional issues)が取り上げられた。この勧告を受けて州際問題に対応する「統一後見保護手続管轄法」(the Uniform Adult Guardianship and Protective Proceedings Jurisdiction Act:UAGPPJA)が2007年に策定された。2008年には、そのリーダーシップと支援により米国内だけでなく全世界の裁判所改革に資するというシンクタンク機能を持つ「全国州裁判所センター」(NCSC)が、「全国高齢者・裁判所センター」(Center for Elders and the Courts:CEC)を設立し、有望な裁判所の実践例を全米に発信した。


(3)2011年 Third National Summit, sponsored by the National Guardianship Network, in Salt Lake City, Utahの開催 

本会合では、

①後見審判プロセスの改善

②個人の権利の擁護

③ニーズへの対応

④不足する資金対策

⑤後見アカウンタビリテイ

⑥信認基準(fiduciary standards)の保持

に関する勧告を行った。


この勧告をモデル法UGPPA に反映させるため新モデル法の起草委員会が組織され、その成果が2017年に「統一後見・財産管理及びその他の保護措置法」(Uniform Guardianship, Conservatorship, and Other Protective Arrangements Act: UGCOPAA)として策定された。

更に、意思決定支援(supported decision making: SDM)を含む「より少ない制約のオプション」の開発等の勧告を州法に反映させていくためには、裁判所とコミュニテイ(司法、高齢者、障害者、成人保護サービス(APS)等のネットワーク)が協力、検討することが重要であるとの視点に立ち、州裁判所主導の関係者のパートナーシップである「後見改革検討学際ネットワーク」(Working Interdisciplinary Networks of Guardianship Stakeholders : WINGS)の活動を各州において展開することを求めた。


なお、この会合の開催についての連邦予算が付けられた2010年には、連邦上院高齢化特別委員会の指示による「連邦議会アカウンタビリテイ局」(GAO)の調査報告が行われ、後見人の虐待、財産搾取について社会の関心を高めることになり、州のタスクフォースが後見問題に取り組んだ。また、「州主席裁判官会議」(the Conference of Chief Justices :CCJ) と「州裁判所事務局長会議」(Conference of State Court Administrators:COSCA) が調査報告を纏め、制度改正を求める勧告を行った。そのため2010年は後見改革を求める大きな転換の年であると云われている。


(「全国高齢者・裁判所センター」(Center for Elders and the Courts:CEC)ホームページ掲載の“Guardianship Reform Efforts”を主に引用)


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