create a website for free

© Copyright 2019 成年後見制度を考える会 - All Rights Reserved

『ここが変だよ成年後見』

後見の杜 代表 宮内康二氏
(シルバー新報連載記事より抜粋)

シルバー新報に掲載された 後見の杜 代表 宮内康二氏による記事です。

全12回の連載に加え、3回の特別編が追加で掲載されました。

各記事を抜粋しています。

一般社団法人後見の杜Facebook より


第1回 第2回 第3回 第4回 第5回 第6回 第7回 第8回 第9回 第10回 第11回 第12回

特別編① 特別編② 特別編③

全15回の記事を抜粋

第1回 
ここが変だよ成年後見

「首長申し立て」原則禁止に
利用促進、後見の押し付け

Mobirise

当社は後見トラブルの相談を受けているが、中でも急増しているのが「自治体が勝手に後見人をつける手続きを取った!」というものである。

後見人は黙ってつくものではない。 「この人は認知症で施設入所等の契約ができないから後見人をつけてほしい」などと誰かが家庭裁判所に持ち込んでつくものである。

後見人をつけるよう家裁に求めることができるのは、本人、四親等内親族、自治体の3種にほぼ限定されている。


首長申し立てとは 市町村長が家裁に「この住民に後見人をつけてほしい」と申し立てる場合を指す。親族がおらず、重い認知症で本人申立ができない場合などを想定し本人の福祉の観点から補完的に自治体に設けられた特例である。

この特例であるはずの主張申し立てが急増している。 表は後見制度が始まった2000年から2018年までの、後見開始の申立総数とその内訳である市長申し立ての件数である。 制度開始当初1万件程度であった後見制度の単年度利用件数は、2012年度以降現在に至り35000件弱程度で横ばいになっている。


これに対し首長申し立ての件数は、制度当初の2000年が23件であったものの、18年には7705件となっている。 全体の伸びが約3.5倍、首長申し立ての伸びは約35倍、まさに10倍である。 申し立て全体に対する首長申立の比率も2000年の0.3%から18年には22.2%に激増している。

ここ20年で、首長申し立ての対象と想定される「親族がなく重い認知症で本人申し立てが出来ない人」が激増したわけもなかろう。


 首長申し立てが激増したのは、後見制度利用促進法によると考えてよい。みんなで後見制度を使いましょうという法律が3年前に施行されたことを契機に国や県が市区町村に対し、首長申し立ての件数を増やすように大号令をかけているのである。

後見利用促進法は、後見を生業にする司法書士団体等が国会議員にお願いして作った議員立法である。後見の利用が増えれば司法書士や弁護士にお金が落ちる仕組みになっているのは誰もが知るところである。

 本人や親族による後見申立件数は減少している中、年35000件の新規件数を維持できているのは、自治体が必死に首長申立てをしているからに他ならない。士業のための首長申し立てと言わざるを得ない。

 そんなこともあり、私は自治体向け貢献セミナーにおいて「首長申し立ては原則禁止にして下さい」と伝えている。 具体的には、「後見を増やすことは明治時代にあった禁治産者、つまり、無能力者を町に増やすことに他ならず、地域にとって名誉なことではないでしょう」と続け、「後見を増やすことで得をするのは後見人になる弁護士と司法書士だけです。住民と自治体はその後見人にお金を払い続けることになるのです」と締めくくる。

それを聞いた多くの自治体担当者は「正直そう思っていた!」と発言される。住民の話を聞くなど現場に近い仕事をする職員ほど具体例を挙げて反省される。

最後に、首長申し立ては原則禁止とする三つの理由をあげよう。

 

理由1  首長申し立ては「3番手」だから

そもそも首長申し立ては本人や親族に続く3番手の補完的措置である。認知症や知的精神障害を有する本人の意思を尊重する後見制度の趣旨は、後見人をつける時点においても反映されるので、本人やその親族が後見制度の利用を求めない場合、市区町村は後見人をつける手続きを控えなければならない。

誤解・誤用の最たる事例をあげよう。某自治体は「本人の居所をめぐり、ご家族と地域包括支援センターの意見が異なる場合、当区では後見人をつけることにしています」と家族に手紙を出した。家族とおばあちゃんが在宅を希望しているのに地域包括支援センターや自治体はおばあちゃんを施設に入れようと強要し、言うことを聞かない場合、おばあちゃんの身柄を確保し施設手続きを後見人にやらせるという手紙なのである。

どこに住むかはそもそも後見人の権限ではない。このような悪用は即刻是正されなければならない。さもなくば行政訴訟が増え、恥をかき、賠償金を払う自治体が増えるだけである。

理由2 「特に必要がある場合」に限られているから

首長申し立ての根拠となる老人福祉法32条には「特に必要がある場合」に限り後見開始の申し立てができると記されている。」特に必要がある場合とは、経済虐待がある場合と考えてよいし、また、そうあるべきだが、こともあろうに身体虐待においてまで後見を使う誤用が多発している。しかも虐待認定がないままの後見開始の申し立てが非常に多いことは問題である。

理由3 「ねばならない規定」ではないから

後見開始の首長申し立ては「できる」規定であり「ねばならない」規定ではない。多くのケースが、日常生活自立支援事業・措置入所・警察介入のいずれかか、それらの混合で解決できる実情からしても家裁の世話になる後見は最後の最後にすべきなのである。

首長申し立てだと後見報酬を自治体が払わないといけないので、家裁に出す申し立て書類は地域包括が書き、申立の署名だけ本人に書かせるケースも増えている。 某自治体は「後見の費用はすべて市が持ちます」ということにして、実は、本人に全て払わせた活動記録(事実)もある。


そんなことをしてまで首長申し立てをする意義がどこにあるのか。各自治体には、今一度、誰のための何のための首長申し立てか再考して頂きたい。

成年後見制度を考える会 2019 All Rights Reserved.